以前、不安が基本にあるから生命保険や医療保険に過度にお金を投入してしまう日本人というのを書きましたが【とにかく不安な心理状態】、先日もこんなことがありました。
眩暈を主訴に膝関節痛、腰痛や背中の張りなどで来院している80代女性。後頚部の張りと痛みを訴え「脳梗塞じゃないかしら」と言い、その少し後には最近の胃の不調を訴え今度は「胃がんじゃないかしら」と言い・・・。
こういった患者さんの手当たり次第の不安はどこから来るのかと言うと、加齢による全般的な自信の喪失と、「よく分からない」、つまり個別の医療知識の低さにあるのだと思います。患者さんにしてみれば鍼灸院だから気軽に思ったことをただつぶやいているだけとも言えますが。
血圧、コレステロール、心臓の定期的な検査を受けていれば特有の症状も出ていないのにそれ以上に脳梗塞を心配してもしょうがないでしょうし(心配なら脳神経外科に掛かればいい)、胃がんにしてもピロリ菌の有無や萎縮性胃炎のペプシノーゲンの値をチェックしていればあとは何年かに一度の内視鏡で解決します。それ以上の心配は意味がないでしょう。
同様に、老後のお金に関していえば投資教育アドバイザーの大江氏は不安の原因は「3つの分からない」として、①生活費~どのくらいお金がかかるのか分からない、②収入(年金)~どれくらいもらえるのか分からない、③蓄え~どれくらいあれば安心なのか分からない、を挙げています。 『定年男子 定年女子』大江英樹、井戸美枝著 日経BPマーケティング
これに関してもごく簡単なものでも家計簿をつけてみたらすぐ分かるのではないでしょうか。それをせずに生命保険文化センターの言うところのゆとりある生活費、“夫婦で月額35万円”というのに振り回されるのです。
これでいうと年420万、10年で4200万。何しろ出典が“生命保険“文化センターですからかなりのバイアスがかかっています。仮に夫婦で月20万で生活できれば年240万円でOKですから。
最大の心配事、医療費にしても70歳以上であれば外来と入院合わせて月5万7600円を超えるとその分を高額療養費として払い戻してもらえます。国民全員が無敵の公的医療保険に入っているのに民間の医療保険は不要だと思います。あくまでも既往症や考え方次第ですが。
『むだ死にしない技術』(マガジンハウス)の中でホリエモンも、おわりに~僕の健康法 10項目の中で⑦生命保険には入らない(死ぬことを考えるくらいなら、今すぐ病院で検査を受けるほうがいい)と書いています。前出の本でも、定年後の生活費の削減の中でも「特に強調したいのが無駄な保険に入らないこと」と著者(元野村證券マンの定年男子)も書いています。
先のことはどうなるか誰にも分かりませんが少なくとも調べられることは調べ、対策できることは少しずつでも定期的に継続してやっていく。そうすればそれ以上不安になることはないと思います。
一般的な高齢者の情報源は新聞とテレビがほとんどでしょう。多くの場合その広告とスポンサーによる恣意的な番組作りでいわゆる情報弱者としての高齢者をコントロールしようとします(カモられます)。そうならない為には玉石混交の情報を取捨選択する能力(最近の言葉でいえばメディアリテラシー)を高めるしかありません。
- 追記:医療保険、生命保険については『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』山崎元 著 文響社、『お金の大学』両リベ大学長 著 朝日新聞出版 が読みやすく、解りやすいと思います
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