東洋医学は血液検査やレントゲン撮影などできないので、様々な体の特徴から身体の状態を探り出そうとする医学でもあります。
当たり前のようですが肌の状態と言っても千差万別、人それぞれいろいろあります。肺(呼吸器系)の状態は皮膚や毛髪に反映されるというのは五臓の働きで有名ですが、古典的な東洋医学でいえば望診と言って例えば入室時の顔を見た時点で、中年男性のテカテカした感じで腰痛を訴える場合はであれば「腎虚」といった予想が出来ます。
つまり体の中の熱が旺盛で体力が落ちて(腎の津液がなくなって)きたためテカテカと表面に出てきて光っているような状態です。
また治療に使う経穴(ツボ)を探すために皮膚表面に触れる訳ですがそこでも、しっとりしていたり、ざらついていたり、乾燥していたりといった肌の状態でその人それぞれの体調など証を判断して治療します。
しかし、この微妙な肌の状態以前に高齢のどちらかと言えば女性患者さんに多いのが、肩や背中からわき腹に引っかき傷が多数みられる例です。本人は見えないのですがそれ故に結構なひっかき傷です。孫の手を使う人にも多く、痒いので本人は気持ちいいのでしょうがこれを使うと背中全体が強い刺激で酷いことになります。
この人たちにありがちな共通の特徴は、入浴時に垢こすりをしていることです。そして困ったことに若い時から習慣的にやっているために止められないのです。
入浴してふやかした皮膚をこそぎ取ってぼろぼろと出るのが見た目できれいに洗った気がするらしいのですが、皮膚科医が垢こすりは「お通じがあるのに浣腸をかけているようなもの」と書いているのを読んだ記憶があります。
若いうちは肌(表皮)も潤い(保湿力)があり再生できるのですが、歳をとってからの垢こすりは確実にダメージが現れます。何十年も再生してきてその再生力の衰えた肌がさらにふやかされて削り取られるのですからバリア機能(薄い脂の膜と考えてください)が低下し水分も保持できないので乾燥しやすく、それが痒みへとつながります。
そして搔きこわし、痒いからと皮膚科を受診してビーソフテン®ローションやらの保湿剤をもらって塗るという、それこそお通じで言えば浣腸をかけておいて下痢止めを飲んでいるようなものです。
これを言っても多くのこすり派の女性は「こすらないと風呂に入った気がしない」と言います。今更優しく軽く石鹸で洗うだけなんてでは満足できないのです。
習慣化がいい方に働けば苦労なくその効果は持続できるのですが、こういう習慣化はつくづく恐ろしいものです。
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