月経前症候群と妊活で来院している30代後半女性。初回の治療前の問診で排卵日を把握するために前回の月経日を尋ねたところ「えーっと~」とスマホを取り出しました。基礎体温のグラフ化されたデータとともに月経日は×、性交渉日は〇と一目瞭然。全て管理できるアプリがあるそうで感心させられました。
このアプリは別料金で産婦人科医のアドバイスも受けられるとの事でコスト、気軽さを考えるとこのようなスマホを使った新しい医療ビジネスは将来的にはかなりの成長が期待できるのではと感じました。
月経痛、PMS(月経前症候群)や出血などでも若年女性を中心になかなか婦人科受診は敷居が高く、月経痛にしても我慢して当たり前という女性が多く、「仕事も忙しく市販の痛み止めで対応しているうちに結果的にチョコレート嚢胞(子宮内膜症)」という経過で結婚後に苦労された患者さんもいました。
このようなアプリの開発は婦人科の来院をためらいがちなそういった女性にもデータの把握、管理とともに健康状態に対する意識を高め気軽に相談できる心強いサポートになることと思われます。
婦人科と並んで女性に圧倒的に多い愁訴、便秘に関しても、「うんログ」というアプリで自分の排便ダイアリーを記録して体調管理をしている30代女性もいました。患者さんの中には体調日記、頭痛日記や腰痛日記を一行程度のメモとしてつけている人も結構いて、そういう風に体調管理に気を使っている人は当然原因から傾向、治療効果、経過を把握しやすくなります。
呼吸器科領域ですが、禁煙に関してもパッチなどでニコチンの血中濃度をコントロールしつつタバコ依存から離脱しようとする従来の方法ではなく、スマホのフィードバック付きのアプリで禁煙への動機づけを維持しようとする治療アプリ®の保険適用に向けた治験も行われています。一方通行の禁煙アプリよりも継続率が高いとの事です(Medtec Japan 2017.10.14他)。
アプリとは違いますが遠隔医療サービスという点では小児科領域でも「小児科オンライン」という小児科医による夜間のライン、スカイプ、電話による医療相談サービスがあります。「相談」といっても“診断は対面で”という大人の事情によるものでほとんど「診断」だと思います。これは患部の画像や動画を医師に見てもらえるのが大きいと思います。
救急外来の8割は自宅安静で対応してもいい症例(橋本代表談)だそうですがやはり親としてみれば不安なので激混みの救急外来に行くしかなかったのです。(以前からある小児救急相談「#8000」は無料ですが看護師が中心で、当然動画や画像も送れません。)
このようにこれからはスマホを介したデータの管理、やり取りの医療分野への参入、介入が便利で効率的ですから需要が大きく見込まれるでしょうし、新型コロナウィルスの流行もあってオンライン診療、遠隔医療の保険適用も毎年拡充されています。
今後は自分の身体のデータを手軽にデータ化ファイル化し、そこからどう医療者とともに自身の体調、健康管理に役立てていくかが生活の質を高める鍵になるのではないでしょうか。
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