達郎ファンの苦悩

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数年前の話です。数カ月に一度程度の間隔で、もう15年以上来院している私と同じ年の男性患者さんがいました。

同じ時代を生きてきたということで音楽の趣味がカブる部分があります。というか僕ら世代の日本のアーチストといえばサザンオールスターズ、山下達郎という感じでした。

彼は達郎ファンなのですが、私もメインはサザン~角松敏生という感じでした。

彼はずっとファンクラブの会員で毎年のように、時には夫婦でコンサートに行っているようで近年は「チケットが取れないんだよ」と言っていました。

中野サンプラザでのコンサートの前に食事をしてビールを飲んでから行くのでコンサート中に「寝ちゃうんだけどそれが気持ちいいのよ」と通なのか失礼なのかよくわからない40年来の筋金入りのファンなのです。

故ジャニー喜多川の性暴力の過去が海外から発信されて以来、芸能界など興味も無かったのでネットニュースやYouTubeも気にしていませんでしたが、同じ事務所の関係者から山下達郎の名前が出て記事を読むようになりました。

その後、それに対応するように自身の長寿FM番組「サンデーソングブック」の中で自分の意見を言ったのですが、これが予想外の「ご縁とご恩」。

これは周りも驚いたのではないかと思いますが、もう失うものも無い70歳とすれば偽りない意見を言いたかったのでしょうが。

それにしても、そこそこ達郎を聞いてきた私にとっても引いてしまう発言でした。「ご恩」ということはとても世話になった取引先だから・・・と言っているのです。

彼は未成年者への性暴力のR・ケリーの時も作品に罪はないとオンエアを通したとの記事もありました。犯罪と作品の関係の問題は時々取り上げられます。

犯罪の程度にもよりますが、クラプトンの「コカイン」はいいですが、被害者が存在している場合はアウトだと考えます。

ましてや抵抗できない子供、少年達です。それが判っているだけで数百人も(国連人権理事会作業部会会見)、複数回にわたって。

小学2年生だった作曲家の服部良一氏の次男とその友人にも繰り返し手を出していたとのことですから十九歳からかなりの高齢まで小児同性愛の行為を続けていたことになります。

性虐待というと女性にばかり目が行きがちですが、それゆえ男性の小児性愛者は発見されにくく闇が深いのです。

どんなにすばらしい宗教活動、いいお説教をしていても少年を性虐待していた司教は駄目でしょう。

昔、数枚のアルバムを買い、今でもYouTubeやFM番組をよく聴いていたという程度の私ですが、曲を聴く気が全く無くなってしまいました。

ちょうど夏だったのに。自分でも驚いてしまう位に。

少なくとも個人的には、やはり作品とそれにかかわった人間、作者は到底別物にはなり得ないのです。

だからこの患者さんがこの件をどう思っているのかをその当時とても聞きたかったのです。

そんなある日、予約が入り来院しました。忙しかったそうでかなり疲れているようで、首肩背中から特に腰と股関節の痛みを訴えました。

そんな疲れて来院した患者さんの気持ちも考えずに治療前半から興味本位でこの度の達郎の一件をどう思うか聞いてしまいました。

「達郎の子供は娘だけど、もし息子だったとして服部良一の立場だったら同じこと言えたかなぁ・・・」

と言ってしばらく黙った後に「頑固なああいう人だからね」といった後「あまり考えたくないな・・・」との返答にとても申し訳ない気持ちになり、同時に彼の気持ちを察しました。

そしてそこからはその話はもちろん、会話はせず治療に専念しました。

長い間達郎マニアだった彼も、達郎の発言で図らずも達郎の言うところの“(彼の音楽が)必要のない人”だと感じさせられてしまっていた一人だったのです。

治療が終わり帰る頃にはいつものように治療の影響で軽く怠さが出たようで「今日は早く寝ますわ」と帰って行きました。

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