懇意にしているケアマネジャーから厄介な腰痛なんですがと依頼されたのは80歳代の小柄な女性でした。
半年前に脳出血を発症し、1カ月入院しリハビリ病院でもさらに数か月の入院。
幸いにも下肢に軽い麻痺が残った程度でした。しかし退院して久々に帰宅すると数週間で急性腰痛を発症してしまいました。
御主人一人の生活で散らかった自宅が許せなかったらしく無理のきかない体でいろいろと頑張ってしまった結果のようでした。
かなり辛い状態だったので2週間で計6回の鍼灸治療をやりましたがほとんど効果はありませんでした。
寝返りがやっとの状態、ハイハイでトイレに行っていたのがキャスター付きの椅子につかまって行けるようになった程度です。
今になって考えるとどこに原因があるのかよくわからない訴えではありました。
痛み止めを飲んでいましたが、腰のどこを押しても痛がります。しかし、安静時の痛みはありません。
右すねの痛みも脳卒中の後遺症と坐骨神経通の症状との関連性を判断しかねていました。
それからしばらく後に、患者さんから電話が来て入院していることを知りました。夜、痛みで動けなくなり救急車を呼んだそうです。
救急車で運ばれたため広範囲のCT画像で判ったようですが、仙骨孔(仙骨神経が通る八つの穴が開いている)を横切るように骨折線があったそうです。
普通にクリニックや病院で腰の強い痛みを訴えても腰椎のレントゲンしか撮らないのでその下にある骨盤骨折までは気付かない事がほとんどでしょう。
もし骨盤のレントゲンを撮ったとしても交通事故などと違って骨折線が目立たないので微妙だったと思います。
以前の骨盤骨折の原因と言えば交通事故や労災事故などだったのですが最近では高齢女性のそれをちらほら耳にするようになりました。
高齢者の骨盤骨折の中で多いのは腰椎の下にある仙骨というクサビ形の骨で、女性は仙骨の空洞が多く骨粗しょう症によってさらに折れやすくなるのです。
転倒、ベッドからの転落、尻もちなどの既往がなくても高齢女性の改善しない腰痛はクリニックで腰のレントゲンを撮っていたとしても、今一度、骨盤骨折を疑い総合病院の受信を勧めるべきだったと後悔した一例です。
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