医療従事者に起こりうる危険

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数年前に埼玉県で訪問診療の医師が患者家族に逆恨みされ殺害されるという痛ましい事件がありました。

日頃から訪問診療の医師や看護師の仕事を間近で見ている者としては本当に心が痛みます。

大阪の精神科のクリニックでガソリンがまかれ放火された事件もそうですが不特定多数のしかもいろいろな人を相手にしなければいけない、そして患者さんを選べない医師は少なからずこのような危険があります。

僕のような紹介された患者さんがほとんどを占める治療院でもトラブルになったことがあります。

10年以上の付き合いのある患者さんでしたが、だんだん通院が厳しくなりいよいよ通えなくなったので訪問治療を何回かしていました。

ところがある日警察から「○○さんがオタクで治療されてから歩けなくなったと言っている」と電話がかかってきたことがありました。

元々、不平不満の多い人ではありました。しかしこちらに全く落ち度が無いと思っていても、少しでも関わりを持つということは恨みを買ってしまうことも考慮しておかなければいけないのかもしれません。

今回の事件の場合も感謝こそされても、いや、亡くなった92歳の母親は感謝していたと思いますが66歳の息子はすべての負の感情を医師に向けました。

基本的に生きている間に最善を尽くすのが医療従事者ですから弔問はしません。もう何の力にもなれないからです。

しかし僕も30年のこの仕事で一度だけ患者さんの家族に声を掛けられ線香をあげに行ったことがあります。

それは本当に家族ぐるみで長く治療した患者さんでしたので家族の気持ちを考え伺いました。

今回も加害者に頼まれて行ったらしいのですが、やはり危険を感じていたのか男性多人数で行っています。

しかし、まさかまさか散弾銃を2丁持って至近距離から撃とうと思っているとは考えなかったと思います。

92歳の母親が亡くなって「もう終わりだ」と思えてしまう66歳をとても普通とは誰も思わないでしょう。

究極のマザコンと言えばそれまでなのかもしれませんが母親を介護する独身男性は少なくないと思います。

多くはあまり不満を訴えずに頑張っているので微力ながらできることはお手伝いすることもあります。

大切なのは社会生活から孤立しないことです。地域包括センターなど相談窓口がありますので一人で抱え込まずに多くの人を巻き込むことが最善の対応策だと思います。

悲観的で内向的で社会性のないこの加害者のような人間はあまりにも特別な例外ですが、そうでない普通の感覚の人間でも先が見えないたった一人での介護は早晩肉体的にも精神的にも行き詰まります。

社会、地域で支える体制はこの25年でかなり整っています。こういった事件を繰り返さないためにも介護者の心の健康が大切です。

不満よりも相談を。

参考:『母さん、ごめん。50代独身の介護奮闘記』 松浦晋也著     日経BP社

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