治療室を開業して以来、糖尿病もしくは予備軍、即ち高血糖を指摘されている患者さんがいなかったことはありません。
国内で糖尿病が強く疑われる人が900万人、可能性が否定できない人が1300万人で計2200万人と言われているのでそれも当然だと思います。
2型糖尿病(いわゆる生活習慣病としての糖尿病)の患者さんばかりなのですが、その患者さんの多さと何しろ生活習慣病というだけあって克服が困難なこともあり専門のクリニックや糖尿病治療を標榜する外来もよく見られるようになりました。
「糖尿の気がある」「血糖値が高めですね」と言われてもまだ切迫感がありませんが、こういう場合は大体その後「糖尿病です」となることが規定ラインです。
何故なら生活習慣病というのは読んで字の如く日々のルーティンの生活習慣として染みついているのでそこそこの意志を持って臨まなければ変えることができないのです。トクホやサプリに惹かれている様ではだめなのです。
親が糖尿病だったという人も多く、体質遺伝と食習慣の二本立てが強い因子になっていると考えられます。
しかし、良くも悪しくも両親、ひいては先祖から体質が遺伝するのは当然の話で、その貰ったものをいかに生かして自分の努力や考え方で改めていくのが遺伝子のメッセンジャーとしての生き物である私たちの努めでもあるのです。
糖尿病の機序はインスリン抵抗性(が高くなること)つまりインスリンが効きにくくなることなのですが、それを防ぐにはインスリン分泌という負荷をかけすぎない食事の質、食事の量を保っていく守っていくことが大切になります。
保つ守るというと修行のように感じられますが、ヒトは何でも手に入るここ五十年くらいの現代の生活において口あたりのいいもの、美味しいものを当然と思って摂取しています。
しかし、それは有史以来の特にここ五万年大して変化していないヒトの身体にとっては対応できない程のあまりにも濃厚な糖質の量ということなのです。
消費エネルギーは技術の進化で急速に減少してきたにもかかわらずにです。
その為、狩りや農作業をしないその辻褄を合わせるためにわざわざ安くないお金を払ってまでして(!)重りを上げ下ろししたり、ロードサイドのガラス張りに並べられたベルトコンベア(正確にはトレッドミル)の上を走って汗を流しているのです。
ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」にもありましたが、あの光景をわずか100年前の人でも見ることがあったら何かの罪人の見せしめだと思うでしょう。
アルコールを摂取する人にも糖尿病は多く存在します。アルコールでなぜ血糖値が上がるのか。実際糖質ゼロのビール飲料自体はほとんど上がりません。しかし、アルコールが入るとその分解に肝臓の機能が忙しくなり、肝臓のもう一つの機能であるエネルギー源としてのグルコースの供給が滞りがちになります。
そのため、何も食べないでアルコールを摂取すると血糖値が下がりやすくなります。結果的に食欲が増して普段より食物を多めに摂ってしまいます。普通のビールでも血糖値はたいして上がるわけではありませんがアルコールが食欲を増すことになっているのです。
摂取直後の血糖値の上がり下がりはYouTubeで糖尿病専門クリニックの銀座有楽町内科の山村医師が自ら数々の飲食物でモニターしているので参考にされるといいでしょう。
しかし、血糖値も大きな指標になりますが基本として重要なのはここ数か月の血糖の状態がわかるHbA1cであることは間違いありません。
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