40歳代女性患者さんから聞いた話です。以前その患者さんの子供が通っていた保育園の同じ組に男の子の兄弟がいたそうです。しかし、この兄弟は双子ではありません。でも二人の生物学上の両親も同じ人物です。この謎解きわかりますか?
答えは4月生まれと次の年の3月生まれの兄弟だったということです。どのくらいレアなのかわかりませんが。霊長類の中でヒトは出産の間隔が短く、授乳中でも妊娠が可能です。
僕も不勉強ながら、授乳中は生物学的に基本として赤ちゃんを守るために妊娠はできないと思っていたのですが、ヒトはそんなことはないようです。
ヒトは生殖活動をしない回りの仲間(祖母など)が寿命を延ばしたことにより子育ての助けをすることによって子育ての途中でも次の妊娠が可能になってきたのかもしれません。
『チンパンジーには出産間隔は5~7年だから(中略)授乳期間は4~5年と長くその間子育てをするのは母親だけである。子供が乳離れするまでは次の子供をつくらない。そのため出産間隔が長くなるのである。他の類人猿も出産間隔は長く、ゴリラは約4年、オランウータンは7~9年である。一方ヒトの授乳期間は2~3年と短い。しかし授乳期間が短いだけでなく、授乳しているあいだにも次の子を産むことができる。人は類人猿とは違って出産してから数か月もすればまた妊娠できる状態になるのだ。』
(「残酷な進化論」 更科 功著、NHK出版新書)
まさに患者さんのママ友はこのパタンです。出産間隔を短くすることは可能になりましたが、ヒトは直立二足歩行をすることによって少し難産(脊椎がS字カーブになり、骨盤底筋も発達して娩出しづらい)になり、脳が大きくなることによって更に難産になりました。
それゆえに出産の時も妊婦単独で出産できずに多くの場合で助けを必要としていたのではなかったのではないかと思います。
『「おばあさん仮設」というものがあり、多くの霊長類のメスは死ぬまで閉経しないで子供を産み続ける。しかしヒトだけは、閉経して子供が産めなくなってからも、長く生き続ける。これは人が共同で子育てをしてきたために、進化した形質だというのである。母親だけでは子供の世話ができないので祖母が子育てを手伝うことにより、子供の生存率が高くなった。その結果、女性が閉経後長く生きること(おばあさんという時期が存在すること)が進化したというわけだ。』(前同)
さて、この状況で現代のオスは何をしたらいいのでしょうか。エサ(給料)を獲ってくることはもちろんですが、食事を含む台所、掃除、洗濯、オムツ交換、お迎えなど、母親がやって欲しいと思うことを聞いてみるのが一番なのではないでしょうか。
“昭和の男”と違って大体できますし、できなければ回っていきませんから。
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