以前、鑑別が容易なものとして関節リウマチとヘバーデン結節について書きましたが【放置されがちなヘバーデン結節】、臨床ではもちろんそんな単純なものではなく日々試行錯誤といったところです。
先日遭遇した症例にも間違いかけた第1中足趾節関節(足の親指の付け根)痛の症例があります。
約4週間毎のメンテナンスのついでに「痛風ではないか」と相談された40代男性ですが、腫れの状態、痛みの程度、尿酸値陽性の既往歴がなかったので通常の関節痛でしょうかと答えました。
靴を履くとき、履いていて段々と拇趾付け根の痛みを感じたそうですが、痛風ではそんなヤワな痛みではなく、また関節の腫れも発赤などなく痛風結節による発作の痛みとは別の物でした。
実際はこういった「関節リウマチでもなく、ヘバーデン結節、痛風でもない時々痛む指の関節症」といった症例はたまに見受けられますが大抵は様子を見ているうちに経過(寛解)しますし、さもなければ透熱灸や皮内鍼を保定しているうちに、痛みが消えて落ち着くといったパタンです。
この場合もそういうつもりで話を聞いていると、朝ズボンを履く時に痛い、朝起きて正座する時に痛いと・・・つまり足関節を伸ばして(底屈)痛いということでこれは骨じゃないんじゃ?と足関節(足首)辺りを探ってみたところ、「痛っ!」と痛みと痺れが拇趾先に放散するとのこと。
足関節の前方、足の甲の一番盛り上がっている所を指先でトントンと叩くとそれが再現します。
これはチネルサインといって手根管症候群(手首の腱鞘炎)では手首の内側をトントンすると痺れるような痛みが手指にひびくというので有名です。
つまりこの症例は痛風、外反母趾など拇趾の付け根の関節の症状ではなく長拇趾伸筋腱炎(足の親指を反らす筋肉の腱部分の炎症)というものでした。
ランニング、長距離歩行、きつい靴による圧迫など原因を尋ねると1週間ほど前に靴ひもを強く締めて歩いたことを思い出しました。
薬を服用するほどではない、病院に行くほどではないが少し不安だ、何となく痛み出した、もしくは常時ではないが関節やスジ(腱)が痛みだして気になるなどという時は、その関節、痛む場所に灸をしてみるというのがいいと思います。
今回の場合なら痛いような感じがした拇趾ではなく震源地の足の甲のほうですが。
炎症への対応としては“冷やし”でしょうと言われそうですが点灸(透熱灸)は消炎効果も高いのです。
自宅対応としては発赤があったり明らかに腫れているときはまず冷やすべきでしょう。
温灸(せんねん灸など)の適応に関しては急性期は避けた方がいいのではないかと思います。
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