治療中に何気なく女性患者の指先を見て気付くのがへバーデン結節です。中年以降の女性の指の第一関節(DIP)に痛みとともに変形が起こり強い痛みの終わりが変形の終わりですが皆さん放置しているのが現状です。手背(手の甲)側の両側に突出するのが多く、関節が少し曲がったまま固まってしまうこともあります。
今思えば僕がこの関節の変形を知ったのは中学1年生位の時、居間で祖母に「ほら、そこにあるよ」と指をさされてその指先の方に行ったら「そこじゃなくてそこ!」とまた同じ方を指します。僕は祖母の指の鍵のように曲がった指先の方を見ていましたが祖母はまっすぐ前を指したつもりだったのです。
指の関節の痛みと変形を伴う疾患で関節リウマチと鑑別すべきものとしてよく挙げられます。関節リウマチは患者の85%が女性ですが、同様にへバーデン結節も僕は男性患者に今まで出会ったことがありません(成書では10:1とも)。
時々患者さんからも「リウマチじゃないかしら」と尋ねられることがあるのですがこれを見分けるのは結構容易でヘバーデン結節は第一関節で、リウマチは他の関節に発症します。リウマチは左右対称で発症しますし、朝のこわばり、そして何より血液検査陽性など特徴的な症状があります。
ヘバーデン結節はそのうち痛みが消え変形が固定して終了というその単純な機序や同じ変形性関節症でもシリアス度合いが低いために、整形外科に行っても「痛み止め出しますか」と言われればいい方で、他には治療法がありませんとガッツリ言い切られますがそんなことはありません。
それは現代医学的にそうだというだけで、微妙なトラブルに対応できる東洋医学ではこんなニッチなところこそ逆に得意とするところなのです。この場合はお灸だけで治療しています。僕の師匠は「お灸で(変形するのを)固める」という表現を使って患者さんに説明していました。
患者さんには小さい(半米粒大)透熱灸を指導しているのですが、一般の方が自宅でやるのは手軽に市販のせんねん灸を使ってもいいでしょう。痛い関節を挟むように左右に、熱い時は交互に移動させます。これを毎日繰り返します。地道ですがシンプルイズベスト。放置するより痛みも痛む期間も、当然それに比例して起こる変形も少なく抑えられると思います。
エビデンスは?と言われたら「お灸がヘバーデン結節に効果が無いというエビデンスも無い」としか言いようがありませんが、何しろコストもリスクもゼロに近い。やらない手はありません。
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