鍼灸が夜尿症治療において治療成績がいいのは当たり前との認識でいたのですがなかなか知らない人が多いようで、最後に鍼灸にたどり着くという患者さんもあります。
ICCS(国際小児尿禁制学会)の治療指針では
1、生活指導
2、夜尿アラームかディスモプレシン(抗利尿ホルモン)
3、2で選択しなかった残りの方法
4、抗コリン薬(+ディスモプレシン)
5、三環系抗うつ薬もしくは再び夜尿アラーム
という流れになっています。
個人的には鍼灸治療を日本夜尿症学会のガイドラインの薬物治療前の夜尿アラームと同列で並べてほしいのですが。
エビデンスが無いってことで同じ土俵に上がることはありません。勿体ない。
ディスモプレシン使用は排尿日誌において夜間多尿+正常膀胱容量の場合ですから通常、医師はディスモプレシン(商品名ミニリンメルト)を処方します。
排尿を記録している人は多くないので排尿日誌で夜間多尿を確認しなくても問診のみでも処方されるようです。
夜尿アラームはウェットストップなど定評がありますのでアマゾンのレビューを見るといいでしょう。
4番目の抗コリン薬は日本では夜尿症には保険適用になってないので大人の過活動膀胱に使用されています。
三環系抗うつ薬≒塩酸イミプラミン(商品名トフラニール)は副作用も強く中止後再発率は40~60%です。
ディスモプレシンにしても有効は60%で中止すると半数が再発します。
この薬は舌下で溶かす口腔内崩壊錠で効果がなければ120μgから240μgに増量されます。
ICI(国際尿失禁会議)の指針ではアラーム、アラーム+ディスモプレシン、ディスモプレシンのエビデンスは1で推奨グレードもAですが三環系抗うつ薬はエビデンスは1ですが推奨グレードはC(使用を勧めない)です。これは副作用(心毒性)が強いことがあります。
何しろ副作用のない薬はありませんが、夜尿症の場合は相手が子供なのでご家族も私も心を痛めます。
ある患者さんの場合は、泌尿器科でトフラニールも処方されていたのですが情緒が不安定になる子供さんを見ていて看護師でもある母親が、かわいそうだと別の小児科へ。
そこでも満足のいく結果が出せず(夜尿はまあまあだったが朝が起きれなくなった)私のところに相談の電話が来ました。この時点で中学1年の男の子です。
頑固な夜尿症なのは判りますが、薬だけで何でも解決しようと考えるのは危険です。
精神状態やホルモンに関連するこれらの薬を出される場合はなおさらです。
この患者さんは遅刻欠席を繰り返していたので抗利尿Hの他にミドドリン(商品名メトリジン)も処方されていました。
母親も忙しい朝から声をからして起こそうとする、でも起きないので母親のQOLも低下していました。(つづく)
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