日常生活がリハビリ

日常生活

70歳代半ばの男性、68歳まで仕事をしていたそうです。既往は大きい疾患もいろいろありましたが現在は服薬はしていません。

2年前に胃がんで胃の3分の2を切除したのですがコロナ禍真っ最中であったために退院後もずっと家にこもりがちになり、その後に見つかった前立腺がんの治療も重なってすっかり体を動かさなくなってしまいました。

胃がんの手術後は当然食も細くなるので体力も落ち、こんなものだと周りも本人も思ったのでしょうかそのまま現在まで経過してしまいました。

安静で少しずつ筋力が衰えていくために気が付かなかったのもありますが、何しろ家族で献身的に身の回りの世話などをやってくれたために、本人としては最低限(以下)の活動で生活が成り立ってしまいました。

何がいけなかったかというと、具合が悪かったり加齢による改善しようのない衰えは仕方がないのですが、この場合は過保護による廃用委縮という事です。

自分の無理ではない範囲で、しかしできるだけ身体を動かすように努力するべきだったのです。

来院の一カ月前に部屋でちょっとした荷物を移動しようとした時に違和感を感じましたが、その翌日起き上がれないことでギックリ腰(急性腰痛)に気付きます。

 クリニックでレントゲンを撮りましたが年相応で問題ないということでそこからずっと湿布で対応し安静にしていましたが改善せず、町内会長の紹介で奥さんが相談に来て、後日彼女に脇を支えられて杖歩行での来院となりました。

困ったのはうつ伏せ(伏臥位)が出来ないことでした。

強い坐骨神経痛の場合など、下肢が痛いという理由で腰を伸ばせずにうつ伏せになれず膝を抱える様に横に寝て(側臥位)治療をすることはたまにありますが。

(来院が可能な患者さんの中で)筋力の低下でうつ伏せになれないというのは初めての経験でした。立ったり座ったり歩いたり自分の身の回りのことは最低限出来るのですがベッドにうつ伏せになることが出来ないのです。

側臥位での治療後にも自分では体を起こせないことも判明しました。

健常者にはよくわからないかもしれませんが日常の何気ない動きも多くの筋肉と関節の協動で成り立っているのです。

高齢者でも日常生活など外出はもちろん室内でも動かざるを得ない一人暮らしの方は相対的に衰えが少ない傾向があります。

人間は何気ない判断を含めて数えると一日に約三千回の決断、選択をしているそうです。

それがひいては脳、筋肉、関節への刺激、運動となっているのです。

どんなに家族が優しく何でもやってくれる環境でも可能な限り自分で出来ることをやることです。

この患者さんは腰痛がある程度収まったのちすっかり委縮してしまった筋肉を取り戻すべく身長に合った使いやすい杖をAmazonで取り寄せ、家の周りの定期的な散歩とリビングなどで自力での寝返りの練習を自宅でしてもらうようお願いをしました。

今までは全て電動ベッドだったせいで不自由がない状態でしたが、ベッド枠やリクライニングが使えない平場(治療用ベッド)ではうつ伏せもできないのですが、同様の理由(主に上腕三頭筋の力が落ちているため)で寝返りもできなかったのです。

0歳児ではありませんが、はいはい以前に寝返りが基本中の基本なのです。動物は動かなくてはダメなのです。

個々の状態に沿ったリハビリ指導と治療は御相談いただきたいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました