酒は百薬の長ではない その1

医療トピックス

前々回、前回はニコチン依存症の怖さについて書きましたが今回はアルコールについて。

アルコールはニコチンと違って依存と非依存の境界がはっきりしていません。というか誰でも依存症になりうるし、依存症と言えなくてもほとんど毎日アルコールを欠かさないという人も多いのではないかと思います。

正確にはWHOが定めた定義というものがあります。

昔から晩酌という言葉がありますが、これも軽めの精神的依存と言えば依存なのかもしれません。

仕事終わりのビール、風呂あがりの一杯、外食時のお酒などアルコールは生活の一部として取り込まれているためにあまり違和感がありませんがそれゆえに注意が必要なのです。

確かにアルコールはニコチン以上に身体に悪いのかという観点では判断が難しいと言えます。

四半世紀ほど前、世界の長寿の地域を調査した研究に日本の沖縄(の女性)が入っていたことがあり、その中で考えられる理由の項目のひとつに「適量の酒を飲んでいる」というのもあったと記憶しています。

つまり女性同士が集まって酒を飲みコミュニケーション、人間関係の潤滑油→ストレスの解消になっていると考えられたのだと思います。

酒は百薬の長という言葉がある通りそういった側面でアルコールはかなり大目に見られている部分があるのですが、改めて述べるまでもなくデメリットはかなりのものです。

その辺は臨床で使われる薬と同様です。アルコールも合法とはいえ薬物ですから使用法や容量を誤ると人間関係、社会ルールはもちろん、命にかかわることになりかねません。 

以前はアルコールは男性なら1日2ドリンク(純アルコール20g)までなどと言われていましたが最近の研究論文では「アルコールは飲まないに越したことはない」という結論になっています。(2018年 ランセット)

つまり精神安定、緊張緩和や抗不安効果はあるようだけれどやっぱり体には悪いですよということです。

ということで、私は晩酌を止めました。38年間飲んできましたが、正確に言うと“一人で飲むのは”止めたということです。

身体に悪いと判断されたものならわざわざ仕事終わりにプシュッとやって、罰ゲームのように二重課税のお金を払ってまでアルコールの力を借りなくても心の安定は保てるだろう、程度の考えです。

今さらですがアルコールにお金を使うと累積された金銭的負担も膨大なものになります。

痛風で膝から足首、拇趾が痛くてノンアルコールビールに替えたら酔わないので普段のビールよりたくさん飲めてしまい、却ってお金がかかると患者さんが言っていましたがこれは例外で、お酒に関する出費は相当なものです。

お酒を飲んでいた5年前まではよく、9%350mlのサッポロのチューハイ(アルコール25g=2.5ドリンク)を飲んでいましたが、2年前その『ストロング系』からサッポロは撤退したようです。

健康リスクが問題になっており、販売を抑制する流れに同業のアサヒビールもその後追随しました。

ニコチン依存、アルコール依存など薬物依存になる人は精神衛生上何らかの問題があることが多いのは周知の事実です。精神衛生的に脆弱な若い人なら尚更です。

そんな依存性の強いアルコールを甘さとフレーバーで口当たりをよくし、24時間、150円程度の価格でどこでも気軽に買うことのできる状態、というのが広告の多さを含めて異常な国なのだとも思います。

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