「老後2000万円問題」以来、将来の不安を政府やマスコミに煽られ不安に思っている患者さんが一定数います。
それを心配するような人達とは対極にある、“資産(お金)はないけれど実は文字通りFIRE(経済的に自立して早期退職)している”患者さんの例を不安を取り除く意味で参考のために紹介します。
82歳、持ち家(借地)で独居男性。腰下肢痛で来院したのですがその当初の訴えは何回かの治療で当初の30%程度まで改善しましたが、メンテナンス的な意図で定期的に通院する無口ですが明るい患者さんです。
後期高齢者に江戸川区から発行される年間15枚の治療券(江戸川区三療券)を自分で予約の治療間隔もスマホで管理して、きっちり過不足なく振り分けて使い切ります。
この患者さんに接していると今時よく言われる“ウェルビーイング”な老後を過ごす人とはこういう人なのかなと感じます。独居高齢者の男性というと陰気、孤独、孤立というイメージがありますが。
ウェルビーイングとは身体的、精神的、社会的に良好な状態にある事とされています。単純に言うとそれはすなわち「幸福である」ということではないでしょうか。
離婚したことと訳あって58歳で退職して60歳から年金をもらっている事ぐらいしか話の内容からは判りませんがきちんとした身なりをして柔軟剤の香りのする80過ぎの一人暮らしの男性はなかなかいません。
一人暮らしが長いのですが、それゆえ当然よく歩きよく動くらしいのです。かといって旅行などするわけでもなく贅沢をしたいわけでもなく粛々と24年を過ごしてきたらしいのです。
「貯金なんかないよ」と。でも厚生年金があるので問題なく持続可能なのです。目の前にある預金や株式だけが資産じゃないのです。
金融資産の様に額面には反映されませんが亡くなるまで確実にもらえる年金制度こそ確かな金の卵を産み続ける鶏なのです。
このように本当の老後2000万円、最近はインフレしているので3000万円問題などと言われていたりするものの本質は預金や資産額ではなく「支出」に注目することなのです。
一般的にお金を基礎において「豊かに暮らすこと」ばかりを考えますが「豊かである事」はまた別にあるのではないのでしょうか。
つまり富を物質、不動産やお金で測るのではなく行動や自分の気持ちから判断して定義すると全く違うことが感じられ全く違うことが意識されてきます。
例えば現役世代なら、1000万円稼ぎながらすべて使う生活をしていたら何も残りません。
しかし逆に300万円でも240万円で生活していけば60万円残ります(月にならせば25万円のうち20万円で生活し5万円を貯めて投資するということです)。
豊かになり、豊かであり続けることで最も重要なのは「収入以下の生活をすること」なのです。
それさえできればお金をかけるという意味でのリッチに暮らす人には決して経験できない自由と幸福があるのです。
何をもって豊かと考えるかによるのですが、上記の患者さんのようなQuiet Life(静かな人生、平穏な生活)を望んでそれを実行していれば不満や不安もありませんし日々に感謝しつつ過ごせるのではないかと感じています。
心と体を少しでも健康に穏やかに保てるコツは持ち物でもお財布の中身でもないのです。
こんな感じの独居の高齢者が男女を問わず少なからず来院します。これからの人口動態や社会状況から考えても、実はこれが普通なのであり、かつ自分なりの豊かな暮らし方なのではないでしょうか。



コメント