体力がない、もしくは落ちてきたので体力をつけたいのですがどうしたらいいか、と聞かれることがあります。
先日は70代女性、その前は60代女性でした。人それぞれいろいろあるのでしょうが正直なところを遠慮なく言えば、「それはごく自然なこと」と答えることになります。
またこれを訴えるのは全て女性なのです。訪問で治療していた90代後半の女性に聞かれたこともありました。
もっと体力が付くように食べて元気になりたいのだが食が細くなってきたがどうしたらいいのだろうというのです。
別の見方をすると肉体の生命力はかなり衰えてきているのに精神的、意識の上ではそれを受け入れられないのです。
東洋医学では体力≒腎気の多くは先天の気と言って生来持って生まれたものだと考えられています。
男性と女性では体力が違うように女性同士でも個人個人でまた全然違うものです。ですからあの人はどうだからとか他人と比べるのも意味がありません。
女性は筋力、瞬発力は劣りますがより長く生きるのは女性というように男性より長持ちするのもまた事実です。
ですから、女性は男性よりやや時間をかけてゆっくり衰えていく印象があります。そして男性より相対的に敏感な性質の分、冒頭のような質問が出るのかもしれません。
「先天の気」は致し方ないのでそうなると大切になるのは、「後天の気」、つまり生まれた後にこの自然界から取り入れる酸素(呼吸)や食事などを含む生活習慣によって養われる気力、体力と考えていいでしょう。
具体的に言うと一つはバランスの良い食事でしょう。タンパク質、炭水化物、脂質にビタミン、ミネラルを過不足なく摂取することです。
高齢者の栄養ドリンク、若年者のエナジードリンクは全くお勧めできません。カフェイン、糖分、生薬などが入っていて、昔のファイト一発の崖から落ちそうなCMではありませんがここ一番という状況なら仕方がありませんが日常的に多用するものでもありません。
ましてや高齢者にとってはプラセボでしかないでしょう(まさにそれを求めているのだという考え方もあります)。
二つ目は適度な運動です。これは以前にも書いていますが解り易く言うと日中はつらつと生活することです。その中にあれこれと体を動かすことが含まれていることが理想であり、それがすべてなのです。
ここでやりすぎは禁物です。ジムに行けば体力が付くかとやりすぎて関節を傷めたりしてかえってストレスが溜まる、それを言い訳に家ではテレビばかりだったり逆に疲れすぎて体力が低下してうつ傾向になってしまった人もいました。
三つめは二つ目と表裏をなす存在なのですが睡眠です。日中の活動が充実していると当然深い睡眠がとれるのです。
結果的にそれは疲れの残らない目覚めのいい朝につながります。一日を一生として生きる×7日×四千(週間)。それの繰り返しです。
ですからこれらの患者さんの言うところの「体力」とは自分が元気なうちは全く意識もしていませんし、かつ生まれてこの方ずっと日々の生活に寄り添っているものなのです。
そして生命の炎が少しずつ小さくなるに伴って体力の低下を感じることは自然な事なのです。急に落ちたり、後から付けたりというものではないということなのです。
何事も受け入れることが出来れば苦しむことはありません。
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