約2年前の話ですが厚労省が2024年2月のサッポロの「ストロング系チューハイ撤退」のニュースに呼応するかのような同時期に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表したので驚いた記憶があります。
何を今更という感じなのですが、国もさすがにこれはまずいと適正量のアルコールの周知に腰を上げたという感じなのではと考えました。
国としては間接税だけに納税者(飲酒する人)は何の文句も言わずに高い税金を払うので税収は多くなりますが、放置すれば最終的にはたばこ同様、医療費に反映されてしまいます。
日経メディカルなど医療系サイトではかなり以前から精神科を中心に医療現場の意見として多くの医師が再三にわたって「ストロング系チューハイはとても危険」と声を上げていました。
厚労省が低価格、高アルコール飲料をターゲットにしたかのような注意喚起をしたのに対してホリエモンは自身のYouTubeチャンネルでこの報道に関し「肝臓の数値を見ればいいし食道がんや大腸がんに対しても内視鏡で早期発見できるから大きなお世話だ」という趣旨の発言をしていました。
確かに彼のような健康、予防医学への意識が高い人はそれで大丈夫なのですが、厚労省のターゲットとしているのはそこのクラスタではありません。
飲酒ガイドライン作成委員会で医師が指摘しているのは、いわゆる健康リテラシーの低い「依存症の患者の多くがストロング系を飲んでいる」というその人たちなのです。
彼らは自分で飲酒量をコントロールできず、その意識もないままに依存症へと引き込まれて行きます。
逆に若者の飲酒離れなどからストロング系の市場が徐々に縮小しているというのは、結局若年層的には「アルコールの力を借りてコミュニケーションをとるのは如何なものか」と感じたり、アルコールの“薬物効果”そのものに嫌悪感を感じている結果であるということだと思います。
精神的な苦しさからそのはけ口として刹那的にストロング系に逃避してしまう、そして気軽な飲酒でも知らず知らずに依存してしまうかもしれないという層に対して厚労省は注意喚起したのだと思います。
2023年に亡くなった作家の伊集院静は夏目雅子が亡くなった後アルコール依存症になっています。
様々な優れた作品を生み出す作家の多くがアルコールとの関係を切り離せないのも、その仕事において多くの心の苦しみをいかに抱えていたかを考えさせられます。
そしてそこから生まれた作品から数えきれない読者を救ってきたのも事実です。
そういう意味でもアルコールのすべてを否定するわけではありません。気持ちよく夕飯を食べ仲間と語らう時のビール、仕事の疲れを癒すチーズとワインの心地良い夜を否定する訳ではありません。コントロール可能なら全く問題ないのです。
しかし、やはり長期的には身体の事を考えるとアルコールの摂取は控えた方がいいのだと疫学調査は教えてくれています。
ストレスコーピングをはじめ、他の方法、手段での精神的ストレスの昇華、考え方のコントロールもしくは健康を害さないものでの代替さえできていれば・・・。アルコール(という薬物)がなくても全く問題ないという人も多いのですが。



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