毎年恒例の行事というのはどこの家庭や職場でもあるのかと思いますが、この仕事をしているが故にこれは良くないと感じるのは「年末の」大掃除です。
気持ちとしては解ります。誰もが一年の汚れを落として誰もが一年の汚れを落とし新しい年を迎えたいと思って当然です。
しかし、それは気力や体力に問題のない場合に限られるのです。
毎年のように年末になるとぎっくり腰系の予約が急に入るのは決まったパタンがあるからです。
12月は師走という位で誰でも忙しいということもありますが仕事をしていない人でも何となく落ち着かないという体調の患者さんが多いのも特徴です。
気のせい、気が急くなどとよく言いますが「気」のせいが大きいのです。
それは鍼をした時の体の反応にも表れます。「気」持ちのあり方というのは体に大きく影響するのです。
そんななか仕事を頑張っている方が何とか年末までたどり着いた疲れ切った体で大掃除です。
そりゃ急性腰痛(ぎっくり腰)にもなります。
胃腸などが疲れているうえに、年末の疲れたガチガチのカラダで低い気温でいつもはしない体の使い方、例えば重い物を持ち上げたり、高い所に手を伸ばしたり、何ならしゃがんだだけでも発症する人はいるのです。
そうなる条件が整っているから、とも言えるわけです。偶然はないのです。溢れそうなコップへの最後の一滴がその動作なのです。
昔から年末に倒れたり体調を崩したりする方が多いのは、忙しく時期的にも無理をしやすいという前提があります。
さらに年末は気候が悪いのです。冬至ですから陰が極まっている状態です。
もちろん気力体力が充実している方は全く問題ありません。
そういう人は冷たい空気が澄んでいて身体がしゃんとして気持ちいいという位です。
しかし、疲れて消耗したカラダの人には寒さ、冷えは強い負荷となります。
基本的に疲れは筋肉には硬く凝りとして現れます。
そこに冷えですから更に柔軟性を失くした筋肉にとってはギリギリのところにちょっとした負荷でギクッと腰が抜けてしまうのです。
去年の年末は高圧洗浄機で楽にできるだろうとタカをくくって大掃除をしていた人がぎっくり腰で来院しました。
わざわざこんな寒い時にやらなくても水を使った大掃除は暖かい5月や6月にでもやってくださいと言いましたが。
実際それが身体への負担を考えれば理にかなっていると思います。
しつこいようですが疲れてなければ年末の大掃除で全く問題ありません。
誰にも迷惑のかからない大掃除だからこそ体調を鑑みて普段やっている普通の掃除でつないでいただいて体力的に余裕のある時期、季節にゆっくりやっていただきたいと思っています。
ちなみに西洋医学でもぎっくり腰に効く薬というのは未だに無いのです。
救急医のコラムで、運ばれてきた患者さんを画像でも異常がない(治療がない)のに泊める訳にもいかないし効く薬も無いので対処のしようがないうえに帰ってくれとも言えずに困るというようなことを書いていたのを読んだ記憶があります。
私がギックリ腰になったら、この1~2カ月のカラダの使い方を反省しつつ患者さんにバレないように腰痛ベルトを巻き、動ける範囲で動いて時間が解決してくれるのを待つと思います。
自分で背中や腰に鍼はできませんから。
もし大掃除をするなら年末ではなく、暖かな季節に限ります。



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