精神的ストレスのほとんどは人間関係に付随することだと思っています。それは日々患者さんの治療をしていてひしひし感じています。
上司はもちろんのこと同僚、取引先得意先のお客さん、またご近所さんから家族、親類等々ありとあらゆる人間関係がストレスの原因になっているのです。
それによって引き起こされる身体の不調も様々であり風邪は万病のもとと言いますが精神的ストレスこそ万病のもとなのではないかと思える程、単なるイライラや些細なもやもやがうつ病などの精神疾患から難病のトリガーにまでなってしまうほど全身に重大な影響を及ぼします。
元々人類も他の動物と同様生き残るためにちょっとした危険も過大に評価することによって危険を回避し生き残ってきたという歴史があり、それが遺伝子に組み込まれているのです。
それが外敵に襲われる危険のなくなった現代においてもその習性が残っていてちょっとしたことが心に引っ掛かったり気になって日常生活の妨げになったりしてしまうのです。
しかし、多くの人は現代社会では日々そういったことを大なり小なり解決しながら生活している訳でそういうところでそのストレスに対しての対応能力処理能力の違いによって、また考え方の違いによって身体に影響が出たり出なかったりするのです。
打たれ強さのことをレジリエンスと言うのですが、これはどのように養ったらいいのでしょうか。生来の考え方、性格もありますが僕の場合は認知行動療法(CBT)を基本にアドバイスしています。
簡単に言うと視点、考え方を少し変えてみると、その対応も変わっていくということです。こういう状態でこう考えてしまったが、そこをこう考えてこうしてみてはどうだろう、ということです。
テクニックの様に言いますが意識しなくても普段から自然に同様の考えや行いをやっている人も多いと思います。というかほとんどの人はそうやって日々メンタルにダメージを受けないように自動的に身につけた認知行動療法で処理しているのだと思います。
この考えと同様の手法が解りやすく書かれた本がありました。「REAPPRAISAL(リアプレイザル)」、レアプレイザルとは再評価という意味です。
結局、イライラ、不満、怒り、落ち込みなどネガティブな感情に支配されないことが重要になります。そういった時は感情的ですし、そういう状態は身体全体にとても悪影響を及ぼしています。
その感情を一歩引いた状態で再評価するということです。これはつまり認知行動療法とも同じことなのです。
この本ではイェール大学で研修医をしていた著者が指導医からのハラスメントに苦しんだ経験が出てきます。
対処としては自分でコントロールできることに集中する、言うべきことははっきり言うなどですが、結局この場合は直接本人にはっきり言ったのですが良くなるどころか悪化する結果になったようです。
しかし、その後複数人の審査の結果で高い評価を受けハーバードに移って准教授になっているのですから単に嫌な上司だったということなのでしょう。
誰にでもよくあるようなこんな状況でもストレス耐性を持つこと、自分のいいところ(ストロングポイント)をもう一度意識して前に進むこと、そんな中でも自尊心を守る(≒メンタルヘルス)ことが重要であると思います。
感情の背景にある正体をもう一度冷静になって見つめなおす、それによってどうしようもないかのような気持ちにもわずかな出口への光が見えるかもしれません。
参照:『REAPPRAISAL 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』内田舞 実業之日本社



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