切ないとしか言いようがない

Uncategorized

何の疑いもなく明日もまた今日と同じ日が訪れると思っていた、子供向けの本のイラストを描いたり童話作家としてウクライナで幸せな生活を送っていた著者。

35歳で9歳の息子と4歳の娘の母でもあります。

ところが。

童話作家の『次の作品が「戦争日記」になってしまった。なんと唐突なジャンル変更だろう』

普通の生活が突然、早朝5時の爆音で生活が一変するのです。

地下室に避難するときから子供たちは自分たちのおもちゃ抱え、彼女は『恐怖と不安をどうにか振り払おうと』スケッチ用のノートと鉛筆を持ってきていました。

8日間地下室で暮らし『子供たちのために』ハルキウを離れることを決め、近くに祖父母がいる彼女の母親は残ることになりました。

『あわててハグをして別れを告げた。涙にぬれた母の目は一生忘れないだろう・・・。』

避難列車は『この世のすべての涙であふれていた。女性と子どもたち。(略)彼女たちの誰もがついさっきまで夫と一緒だったのに、今は一人になっていた。』

『子供たちは泣いている。母親は涙を飲んで子供をなだめる。パパは次の列車で来るからと。』

リヴィウで国境を超えることができない夫と別れる場面も重く辛いスケッチです。

『夫は私たちをバスに乗せた。ここから先、彼はわたしたちと一緒に行くことができない。わたしは涙をこらえきれずにいたが、夫は全力でわたしたちを励ましてくれた。』

『「Love is」のガムを握らせて、次に会う時にこのガムを開けようと約束した。』

ほとんど全てのウクライナの人々がそれぞれにこのような何の必然性もないない別れ、苦しみに直面しています。

鉛筆で描かれた子供達や女性、老人、風景全てがモノクロゆえにその悲しみが強調されます。

この戦争が始まった時にも書きましたが、こんなことが現代社会に現実に起こっていて、そしてそれを止めることができないという歯がゆさ。

子供達に何と言って説明、謝罪したらいいのだろうと思います。

国連常任理事国、世界のロシアがやっている道理の通らない屁理屈と人間の所業とは思えない卑劣がまかり通ってしまうこの現実を。

これだけの高度な文明社会で恨みもない人間の殺戮がだれにも止められないという人間の無力。

ロシアに併合された地域では夏休みの避暑や避難と称して子供たちをロシアに連行したまま26万人が戻ってきていないという報道もあります。

真っ先に独裁者の犠牲になるのはいつも女性と子供です。

『大声で泣き叫びたかったが、すぐそばにはわが子たちがいる』

こんな母親と子供たちが今現在も苦しんでいると思うと、切ないとしか言いようがありません。

参照:『戦争日記 鉛筆一本で描いたウクライナのある家族の日々』 オリガ・グレベンニク 河出書房新社

コメント

タイトルとURLをコピーしました